星野と鱗手の趣味のリスト
本棚紹介その2




鱗手オキルのマイ・コレクション紹介第二弾です。スライド式本棚編。
いつでも傍に置いておきたいような、僕に夢を与え続けてくれるマンガたちです。
画像 スライド式本棚A(マンガ)‐左スライド1

・集英社からハードカバー・漫画文庫の2形態で出ていた「手塚治虫名作集」全21巻。そのはじめの6冊は「ライオンブックス」「タイガーブックス」系を中心とした短編傑作選。社会的はみだし者と生物学的はみだし者がコンビになる不思議な物語が多く、とにかく魅力的な2人組がいっぱい。将軍とピンクレディー、スダマと不破臼人、るんとアキラ、四村とシャミーなどなど、一度読んだら忘れられない濃いメンツです。彼らの物語をもっと読みたい。長編で読みたい。でも、手塚先生はもういない。あー…(泣)。

・好きなマンガ単行本ベスト5を選ぶなら絶対入れたいのが「綾辻行人が選ぶ!楳図かずお怪奇幻想館」。12の短編と小説1つ。決して到達できない他者の内面に映る「自己」が気になって仕方がない気持ち。多分誰もが共有できる不安が、少しばかり過剰になるだけでこんなにもアブナく哀しい物語になるということにびっくり。また、そもそも内面に言語的思考があるのかさえわからない異形キャラである「モクメ」(『ねがい』)や「ギョー」(『怪獣ギョー』)に漂う哀感もビシビシくるものがあります。

画像 スライド式本棚A(マンガ)‐右スライド1

・高橋葉介先生の名短編「ミルクがねじを回す時」は何度読んでも面白い。パーフェクトすぎる寓話作品。また、コメディ短編「惑星LOVEの崩壊」の何とも表現しがたいハイテンションな雰囲気が好きです。とある夫婦が自分たちのクローンの夫婦間殺人のニュースを自分たちのクローンが報じているのをお茶の間で見ている場面が、何度見ても吹きます。これはこわい(笑)

・2015年現在、(復刊や装丁ちがいを抜いて)商業単行本がいよいよ100巻越えしそうな「超人ロック」。少年画報社版第一作「炎の虎」のラスト数ページは少年画報社の新書版とビブロス文庫版等では絵が異なっているので、比べると興味深いかも(僕は古いバージョンが好きかも)。「魔女の世紀」のラストカット、主人公の後姿と銀河はいつも見入ってしまいます。

・石ノ森章太郎先生の「イナズマン」、主人公が優等生過ぎないところが魅力的(上の「番長惑星」も)。犠牲者の出し方が容赦ないなぁ…。
画像 スライド式本棚A(マンガ)‐左スライド2

・ハードからソフトまで手塚先生のさまざまな顔が見られる短編集全2巻。胸が締め付けられる「おけさのひょう六」と「嚢」(ふくろ)のラストに感無量。

・永井豪先生の「凄ノ王」(スサノオウ)、学園モノの雰囲気の1巻序盤、あまりの悲劇に記憶を失くした主人公が意図せず復讐を遂げる2巻、部活動越境サバイバルの中盤、壮絶主人公いじめと覚醒、神話時代の始まり…、余りに多くの要素が詰まった壮大な作品。毎巻が衝撃的。

・絶版が惜しい講談社文庫「松本零士SF傑作選」シリーズ。理不尽な苦い思いを味わう主人公ばかりだけれど、だからこそ共感できる魅力的な少年や男が多いです。『パニックワールド』併録の「夜光都市のミライ」が切ないなぁ。でも好き。ジュブナイルファンタジー色が強い「魔女天使」はむしろほっとできるかも。ところで、各巻の表紙の美女と中身が対応していないのに雰囲気が損なわれていないというところがまた凄い。たとえ本編に登場しなくとも、「いや彼女はこの物語の根底に流れているものの表象です」と言われればそんな気がしてきそう…(編集した人にその点聞いてみたい)。
画像 スライド式本棚A(マンガ)‐右スライド2

・ショッカー幹部「この計画はもともとおまえたちの政府が はじめたものだよ」。この終盤の展開にびっくり。「仮面ライダー」の原作、面白すぎ。国民ナンバー制への危惧をここまで直球に語れる表現者としての勇気に感服。

・これまで哀しい物語はたくさん見てきたけれど、竹宮惠子先生の『地球へ…』第2部、「太陽がまぶしい」という呟き以上に哀しいカットを僕はほとんど見たことがありません。ぶっちゃけるとカミュ『異邦人』のそれを読んだ時よりもその意味を考え込む時間が長かった。キースをはじめとするキャラクターたちが、それほど魅力的ということですね。

・兜甲児が不良っぽい原作版「マジンガーZ」、コミカルなシーンが好きですね。特に文庫版4巻。われらが主人公がご機嫌にマジンガー風コロッケを作っていたらブロッケン伯爵がいつの間にかお邪魔していたシーンとか、鉄十字兵の「伯爵!おたすけしますぞ!」「ダダダダダダ」からの「トリャ〜」「あっ」「ボカン」の流れに何度笑ったかわかりません。
画像 スライド式本棚A(マンガ)‐左スライド3

・大学生友達のあいだでも知らぬ人無しというくらいの名作「半神」。ユージーが目を覚ます場面、窓枠がまるで癒着した十字架のように見える場面が辛かった。萩尾先生は本当に神がかってます。文庫版『半神』併録の「金曜の夜の集会」もまた、きれいな哀しみが読後に残る青春SFの傑作。

・子どもの頃、病院で読んだ、藤子・F・不二雄先生の「おれ、夕子」の切なさが忘れられず、とうとう買いました。やっぱり切なかったラストシーン。

・松本零士先生の『四次元世界』は、はじめて買った松本作品。時代・時空を越えたさまざまな作品が読めます。中でも、「無限世界のヤン」「みどりの国のマーヤ」「さらば生命の時」「サレルヤの森」「蛍の青い火」「幻想世界のアム」とつづく一連の昆虫擬人化少年の儚い恋の物語群が泣けます。無邪気すぎる夢といじらしいプライド。はじめは幻想的で淡い印象、それが読めば読むほど濃く情熱的な深い印象へと変化していく読書体験でした。
画像 スライド式本棚A(マンガ)‐右スライド3

・白泉社文庫「美内すずえ傑作選」、1巻の『妖鬼妃伝』収録の3編が怖すぎ。特に表題作の、日本人形がいっせいにこちらを向くシーンなんか、子どもの時に読まなくてよかった……。絶対トラウマになっていたはず……。美内先生は表情で怖さを醸し出すのが巧過ぎです。一方、2巻『聖アリス帝国』の明るさにホッとしますね〜。併録の「ふたりのメロディ」、太鼓打ちのヒロインとバイオリン弾きの美青年の掛け合いがとにかく可愛い。こういう健康的で前向きなラブコメを見たかったんじゃよ、オラは。

・『パタリロ!』の「スターダスト計画」と「霧のロンドンエアポート」は不朽の名作。アニメ版も良かったけれど、やっぱり原作は最強。

・あざみさんは「メリークリスマスを食ったバケ犬」さんがお好きだそうで。良いコですよね、ほんと。彼に対してめっちゃきついお姉ちゃんもイカしてる。
画像 スライド式本棚A(マンガ)‐左スライド4

・『人造人間キカイダー』の結末は言わずもがな。「…おれはこれで…人間と同じになった…!! だが それとひきかえにおれは……/…これから永久に“悪”と“良心”の心のたたかいに苦しめられるだろう……」。「人間」になることは、不完全な良心を完全にすることではなく、不完全な良心が内なる悪と戦い続けるようになることだったんですね。それを知ってなお生き続けるジローの背中の悲哀感は、永遠に記憶に残る印象深さがあります。

・アダルトな魅力に溢れた『時計仕掛けのりんご』と『鉄の旋律』。中でも「ペーター・キュルテンの記録」の主人公が異色で、サイコパスとして魅力的。彼に同情していいのか読者を戸惑わせるような静かな作劇が素敵。

・『日本発狂』も好きですね。SFジュブナイル感いっぱいで、なおかつ一定量の生命の流動が2つの世界を経済学的に調整しているという世界観が深い。余談ですが、くるみちゃんのキャラデザインがなんか好き。
画像 スライド式本棚A(マンガ)‐右スライド4

・『やけっぱちのマリア』は好きな手塚作品ベスト3に入れたい作品。存在と非在のあいだに宙吊られるようなキャラクターを描かせたら、手塚先生と萩尾先生の右に出る人はいないんじゃないでしょうか。存在であることよりも虚像であることを自ら肯定するヒロインの悲哀は、「るんは風の中」と同じく、忘れがたい余韻を残します。でも、彼女たちがただの妄想ではないということを、少年の成長がしっかりと証明してくれている。生命をもった実体であることと、誰かの中の記号であることとのあいだに、誰もが「心」の不思議を夢想するけれど、そんなコンプリケイテッドな問題を至ってシンプルな表現で切り取ることができるのが手塚先生の凄いところの一つだと思います。

・あざみさんイチオシの『走れ!クロノス』は、一冊丸ごとSFジュブナイル系のストーリー。併録作の「ぐうたろう千一夜」中の短編「女隊長デルマ」が特に印象的でした。しみじみした余韻が残る青春の一コマ。

・ネコのミーくん、好きだ。マスコットとして以上に、漢として恰好いい。
スライド式本棚A(マンガ)‐奥棚の上2段

・新井隆広先生の温かみのある絵柄が大好きです。イギリスの町の風景も、どこかノスタルジックで妖しいモノが潜んでいそうな雰囲気が絶妙。

・言わずと知られた「地獄先生ぬーべー」は何度も読み返した作品。昭和マンガを読み始めてからは、それまで気付けなかったパロディのネタもわかるようになってきて、より楽しくなりました。

・黒姫にしても鬼頭のサヤにしてもティスタにしてもシャドウレディにしても、反則的なまでに強いヒロインは見ていて清々しいですね。そして、その隣で旧来の物語における「ヒロイン」役を担う健気な男性陣が、それでも主体性を失うことなくヒロインのサポートに自ら進んで命をかけている様子の何といじらしいこと…。
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スライド式本棚A(マンガ)‐奥棚の下2段

・読んだ平成マンガで個人的に一番笑えた作品は、哲弘先生の「ムラマサ」です。「そのまんますぎる」系統の迷台詞が突き抜けています……。

・宇野比呂士先生の、これぞ冒険!という感じのまっすぐな作風が最高に気持ちいいです。『天空の覇者Z』はもっともっと有名になってほしいな。

・阿部共実先生の「大好きが虫はタダシくんの」はたぶん一生忘れられない作品。読むたびに、つい意味の空白を過剰に充填したくなってしまう。この作品がもつそんな強度に惹かれます。

・花とゆめコミックス&プリンセスコミックスの一群と「エリア88」はあざみさんの青春の思い出の品。共有財産にさせてもらいました。やったー。
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2つあるスライド式本棚のうち、丸ごとマンガで占められているのがこちら。
僕の成長過程どころか、性癖・趣味・好みのキャラ属性までばっちりバレてしまう本棚でありました(汗)

以上、鱗手オキルの本棚紹介第二弾。